駄文

徒然草の下位互換です。

吉祥寺には吉祥寺どんぶりという伝説の店がある。

 
 
 
 
 
 
 
吉祥寺には吉祥寺どんぶりという伝説の店がある。
 
 
 
吉祥寺には吉祥寺どんぶりという伝説の店がある。
 
 
 
大切なことなので2回言った。
 
 
 
 
まさか平成の日本に生きて尚、吉祥寺どんぶりの存在を知らない不届きもの(お前は何のために生きているんだ?)がいるとは到底思えないが、世の中には信じられないほど常識を欠いた人間がいることも知っているので一応説明しておこう。
 
 
 
まさか説明しなくても分かってるよ、という読者の声が書いている今でさえ大量に聞こえてくるが、ご容赦願いたい。決して読者のことをバカにしているわけではないのだ。
 
 
 
 
ただ、万が一にもいるかもしれない(いや、さすがにいないと信じたいが)吉祥寺どんぶりの存在を知らない人(いるはずはない)にも門戸を広く開放してやろう。というより、吉祥寺どんぶりを知らずに生きる人生の羅針盤を失った者(本当に存在するのか?)に指針を示してあげようという救いの手を差し伸べるのが目的である。これは、慈愛の記事だ。
 
 
 
 
一言で言うと、吉祥寺どんぶりは聖域〜サンクチュアリ〜であり、富と権力の象徴であり、日本の中枢であり、世界中の運気はここから湧き出て分配されているとも言われている。
 
 
いわゆる成功者と呼ばれる人や、世界中の首脳を始めとした権力者は皆こぞってここに通い詰めている。
 
 
 
豊田市は株式会社トヨタの本社があることから豊田市となったのは皆さんご存知だろうか?
 
 
同じことである。
 
 
 
吉祥寺どんぶりが存在することからその地域一帯を"吉祥寺"と呼称するようになったと言われている。
 
 
 
 
 
一つの小さな飲食店が持つには絶大過ぎる影響力。
 
 
 
 
 
 
私は大学の寮に住んでいた2年間、帰路にあったここにとにかく通った。この2年間で吉祥寺どんぶりに通った回数なら誰にも負けないと言い切れる自信がある。当然全てのメニューを食した。これは私の誇りである。
 
 
 
 
否、違う。
 
 
 
吉祥寺どんぶりに"通った"のではない。
吉祥寺どんぶりに"礼拝"したのだ。
 
 
私はあまりにも失礼だった。訂正しよう。
 
 
 
吉祥寺どんぶりの効能は凄まじく、私はここに礼拝し始めて運気が急上昇、年収は瞬く間に5兆円を超え、身長はみるみる伸びて3mに到達、ベンチプレスで1200kgを差し、IQは400まで上昇、突如この世の全てを見通せるようになり、スタンドも出せるようになった。
 
 
これはメニューの一部だ。
 
 
 

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これはチーズ豚カルビ丼にマヨネーズをトッピングしたもの。

カルビにチーズ、そしてマヨネーズ、当然、美味いし美味くないわけがない。
 

 

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 これは夏季限定のメニュー、冷しゃぶ丼。我々人類は、吉祥寺どんぶりの冷しゃぶ丼を食べて初めて夏を実感する。歌人がしばしば季語に冷しゃぶ丼を用いた和歌を詠み、古くは万葉集にも掲載されている。

 
 

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これはかつて無敵を誇った伝説のメニュー、ネギ塩カルビ丼。牛肉価格の高騰によりメニューから無くなってしまった。盛者必衰の理。

 

 

 

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 これは去年突如として出現したネギ塩牛タンガーリックチャーハン。ガーリックチャーハンの上にネギ塩牛タンを乗せた一品。最早、ここまで行くと危険である。あまりにも美味過ぎる。死人が出かねない。早急に販売を止めるべき。

 
 
素晴らしい景色だ。
 
 
 
世界中のどこに行ってもこれより美しい光景を見ることは叶わないだろうと、皆さんも本能で直感しただろう。言わなくてもそれぐらいはわかる。
 
 
これらを目の前にした人間の持つ感想はただ一つ。
 
 
 
 
「"頂"を見た」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日は中間テストを終え、現在はバイトから帰っている途中だ。
 
 
引っ越してしまい帰路に吉祥寺どんぶりがなくなり、礼拝の機会もめっきり減ってしまった。
 
 
ふと、あの味を思い出してしまった。
 
 
 
そうなると体はもう言うことを聞かない。
 
 
 
体は勝手に井の頭線に乗り換え、また意識もそれを後押しする。
 
 
 
高鳴る鼓動、早まる足─────。
 
 
 
到着、慣れた手つきで食券を購入。何百回とやってきた作業だ。目隠しでもできる。
 
 
 
店員さんに食券を渡し、"吉祥寺どんぶりの学割"(注:学生のうちはこれにより肉増しか飯増しがタダになる)を提示。
 
 
 
今日は塩ニンニク丼肉飯増しだ。
 
 
この注文してから出るまでの永遠にも感じられる時間。
他の礼拝者達の顔をざっと見る。
皆、敬虔な顔つきで食事をしている。いい態度だ。今後もその姿勢を忘れるなよ。
 
 
 
 
 
 
 
そして、その"刻限(とき)"は来た─────。
 

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その"ブツ"を目にした瞬間、精神は錯乱し狂乱、マッハ3で割り箸を割り左手は脊髄からの命令で丼を持つその男、バーサーカー……!!!
 
 
およそ敬虔とは程遠い態度であるが、数ヶ月ぶりの吉祥寺どんぶりなのだ。正気を保っていられるはずもない。
 
 
脳内麻薬がドバドバ出て意識は遠のき白目を剥きながらかき込むッッッッッッッッ!
 
 
 
あまりの多幸感で薄れゆく意識の中で時間は無限へと引き伸ばされていく。ふと、この22年間の人生のダイジェストが脳内で流れ始める。そうか、これが走馬灯というやつなのか。俺はそろそろ死ぬのか─────。
 
 
 
 
 
ここからしばらくは記憶がない。
 
 
 
 
ただ、ただただ夢か現かわからぬような精神状態の中、ただ"快"だけが存在していたことを僅かに覚えている。
 
 

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気がつくと目の前にはどんぶりの亡骸があった。
 
 
 
 
 
 
─────赦そう。
 
 
 
 
 
─────私は、全てを、赦そう。
 
 
 
 
 
吉祥寺どんぶりを食べ終えた私の魂のステージはまた一段上がり、悟りの域に達していた。
 
 
 
 
吉祥寺どんぶりの美味さ、そして吉祥寺どんぶりプレイヤーとしての腕は落ちてないことを再確認し、颯爽と去る。
 
 
 
吉祥寺駅で時計を見ると、ここに到着してから20分しか経っていないことに気がつく。20分。こんな幸せな20分があっていいものなのだろうか。世界で一番密度の高い、20分。
 
 
 
 
井の頭線で腰を下ろした時、感動のあまり手は勝手にスマートフォンを取り出し気がつくと吉祥寺どんぶりの記事を書き始めていた、という次第である。
 
 
 
是非、これを読んだのを機会に足を運んで欲しい。
 
 
 
 
 
 
 
 
いや、さすがに吉祥寺どんぶりを知らない人はいないか……。